交渉力

交渉力 結果が変わる伝え方・考え方 (PHP新書)

交渉力 結果が変わる伝え方・考え方 (PHP新書)

  • 作者:橋下 徹
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 新書

橋下徹さんの2020年4月時点の最新の著書。

弁護士として企業代理人の立場で臨んだ交渉や、大阪府大阪市の首長として政治行政に取り組まれていた頃の
組織内外の数々の交渉を例に挙げながら、橋下徹さん流の交渉の極意が示されている。

①相手に利益を与える。譲歩する。
何も与えなければ相手も動かない。
自分の要望を受け入れてもらいやすくするために、どうやって相手に利益を得たと思ってもらうか。
できれば「仮想の利益」を与える。こちらにはマイナス、持ち出しにならずに相手にプラス、利益になるものを見つけ出す。

②「合法的な脅し」を使う。
弁護士であれば訴訟を持ち出す。選挙であれば対立候補を立てるといった合法的手段。
脅しながら、これを取り下げれば相手に利益を与えることにもなり、自分の要望が通りやすくなる可能性がある。

③お願いする。
お願いが交渉といえるかはともかく、と橋下さんもおっしゃっているが、最終手段としてはお願いせざるを得ない場面もある。

④要望の整理が非常に重要。
自分の要望のうち譲れる事項の順位付けと譲れない事項の明確化。
相手の要望についても同様に、相手の判断基準や価値観、会話から優先順位付けの想定を立てる。
また、要素に分解して当事者の一致点と不一致点を整理する。案外小さな点が不一致だけだったかもしれない。
自分の要望と相手の要望のマトリクスが出来れば、相手が利益と思うポイントや自分の死守すべきポイントがはっきりする。

⑤最後は握手で終わる
交渉がまとまらない場合でもお互いの労をねぎらい握手で終わる。交渉決裂しても人間関係は壊れずに済む。
ケンカ別れはしない。


自分の日常業務を振り返れば②「合法的な脅し」(に近い?)を使うことが多いように思う。
いや、交渉というより説得という方が適切かもしれないが、人に動いてもらうという点は共通すると考える。

例えば「この処理は税務調査で指摘されるだろう」という脅し。
「税務調査」というキーワードは納税者にとっては一般的に響くように思う。
税務署という権力を使っているので、橋下さんに言わせれば自分の力を使わないとダメということになるかもしれない。
また、本来税務署がどういうかという話ではなく(当然それは想定して取引や処理を検討しつつも)、
法や基準に照らしてどうなのか?常識的な価値判断としてこれは認められるのか?という価値判断があるべき。

あるいは「監査意見に影響がある」という脅し。
これは監査意見を出す立場として自分のあるいは自分の所属する組織の力を使った言葉だ。
とはいえ、この言葉が出るようでは監査先との関係はよろしくないというもの。
この言葉を発する前に、というか交渉に持ち込む前に、監査先自らあるべき状態に進んでもらうように誘導するのが監査の立場だろう。

そして⑤「最後は握手で終わる」のは難しさは痛感している。
自分の未熟なところではあるが自分の精神状態や相手次第ではケンカになり、対立してお互い引けなくなるので、握手なんかとてもできない。
勘定の話が感情のぶつかり合いになる。雨降って地が固まればよいが、土砂崩れに地割れで復旧のしようが無い。
こういうときは自分ではどうしようもないので、上司や同僚など別の人から話をしてもらう他ないと思っている。
頂点に立つ人は別の人からなんて悠長なこと言ってられないので、まだ自分は楽な立場にいるのだろうなとは思う。